1-4 自己再生(Self-renewal)の実践

変化にはエネルギーが必要です。あなたのエネルギーはどうなっていますか?あなたが自分の身体をどれくらい上手くケアできているかどうか、見直してみましょう。

1日16時間、週7日を、栄養バランスの悪い食事とカフェインやアルコールの摂りすぎで過ごしていたら、身体のエネルギーを使い果たしてしまうでしょう。

栄養価の高い食事を規則正しく摂り、質の高い睡眠、日常の運動、そして自身を再生するために時間をとることが必要です。あなたの内なるエネルギーを再充電することは、複雑な変化を乗り越える際に大きな力を発揮します。

あなたが取り組むセルフケアの習慣が増えるほど、あなたは回復力を増すことができます。ところが、変化の危機に直面している時、多くの人が「時間がない」と言って、セルフケアを後回しにするのです。習慣的な自己再生の実践が最も必要な時であるにも関わらず。

セルフケアの習慣

あなたが習慣的に実施しているセルフケアはありますか?

食事   
・健康によい朝食を食べる
・アルコールの摂取を制限する
・身体に良い食事を摂り続ける

休息
・静かな時間を日々に取り入れる
・眠る前に、リラクゼーション・エクササイズを行う
・質の高い睡眠をとる

運動
・定期的に競技やスポーツに参加する
・少なくとも週に3回、20分、有酸素運動を行う
・できる限り歩く 

精神的活動
・個人的なゴール、仕事のゴールを設定する
・時々、自分が成し遂げたことを評価する
・友達や家族と過ごす時間を定期的に作る

1-3 変化に対する反応

変化は池の中に投げ込まれた石のようなものです。あなたの生活に混乱、興奮、苦痛、時には危機といった波紋を起こします。あなたのいつものやり方や将来のプランが確かなものではなくなるかもしれません。明快さの代わりに、変化は不確実性と移り変わりをもたらします。この混乱はあなたの頭の中だけではありません。あなたの身体にも影響を及ぼし、病気になることさえあります。あなたの感情、特に自分に対する気持ちにも影響を与えます。

変化を経験している時には、自分の身体、思考、感情から送られてくる可能性があるシグナル(合図や信号)に注意を払いましょう。

身体のシグナル
頭痛、発疹、疲労感、胃の不調、軽度の痛み、風邪
思考のシグナル
否定的思考、混乱、注意散漫、生産性の低下、不眠症、物忘れ
感情のシグナル
不安、怒り、恐れ、欲求不満、抑うつ、動揺、または引きこもり

変化に対する自分の反応を観察する

あなたが最近経験した大きな変化について考えてみましょう。

変化を経験していた時、今思い返してみるとどのようなシグナルがありましたか?

 ・身体のシグナル
 ・思考のシグナル
 ・感情のシグナル

変化はあなたの身体、思考、感情それぞれにシグナルを生み出しますが、一般的に人はそれぞれある一つの領域のシグナルに気づきやすいものです。これが、変化に対してあなたとは異なる反応を示す人がいるかもしれない理由です。たとえば、変化を経験して食べ過ぎる人もいれば、食欲がなくなる人もいます。これは受け取ったシグナルが異なることからくる、反応の違いとも言えるでしょう。

3つの領域(身体、思考、感情)のすべてのシグナルに気付くことができるようになれば、それらに早く対応することができます。あなたが早く気づけば気づくほど、変化を乗り越えるための行動を早く起こすことができます。

心の状態(思いや気持ち)のシグナルは、認識することが難しい場合が多くあります。これらのシグナルが何であるかを認識するための、シグナルを表現する「言葉」を多く持っていないからです。それが何であるかが言葉にできないからといって、心の状態のシグナルを無視しないようにしてください。これらのシグナルはすべて重要なのです。重なり合った円のように一つのシグナルが他にも影響を与えます。

1-2 変化が与える影響

誰もが違うやり方で、職場や生活の変化に適応します。新しい生活環境に慣れるのに膨大な努力が必要な人もいれば、少しの調整だけで慣れてしまう人もいます。あなたがチェンジマスターであれば、どんな変化でも前に進むことができるでしょう。チェンジマスターでない人たちは、同じ変化に遭遇したとしても、ストレスを多く経験するかもしれません。

2人の研究者、トーマス・ホームズ博士とリチャード・ラヘ博士は、深刻な病気にかかったり、事故に巻き込まれたりした人たちが、その前の数年間の生活の変化が著しく増加していたことを明らかにしました。

そしてこの生活における大きな変化を、ライフイベントと名付けました。

以下は彼らが作成した「社会的再適応評価尺度(The social readjustment rating scale)」を応用して作成したライフイベントの数々です。

この1年であなたが経験したものはいくつありますか?

仕事
・職種の変更・職責の変化
・同僚とのトラブル・労働条件の変化
・新たな技術の導入・定年退職
・仕事に関するスキル向上のためのコース受講・解雇または失業
・合併、買収、もしくは組織再編
経済事情
・大きな出費や新規借り入れ・ビジネスの破綻、経済的損失
・経済状態の変化(良くも悪くも)
家庭/家族
・引っ越し・家族での過ごし方の変化(休日、お祝い事等)
・住宅改修やその他の目立った家計の変化・姻戚とのトラブル
・配偶者との口論の増加・配偶者や家族の死
・親しい友人の死・結婚
・新たな家族が増える(誕生、養子縁組、親族の同居)・配偶者の就職や離職
・離婚・配偶者との別居や離婚調停
・家族の健康や日常習慣の変化
健康
・大きな怪我や病気・睡眠習慣の変化
・食習慣の変化・余暇の時間や過ごし方の変化
個人的、人・社会とのつながり
・個人的な輝かしい成功・性的障害
・休暇・修学、卒業
・信教の変化・新たな親しい友人、恋人ができる
・社会的活動の変化・将来に関する大きな決断
・法的な問題・事故にあう/事故を起こす
・個人的な財産の喪失、盗難または損害・政治的信念の変化
・失恋

あなたがチェックをつけた項目はいくつありましたか?あなたのチェック数に該当する説明を読んでみましょう。

0−15平穏な1年でした
16−25チャレンジングな1年でした
26−37変化を乗り越えるのに誰かの助けが必要な1年でした
38以上驚くほどスピードが早く、目が回るような1年でした

変化がどのように認識されるかは人によって異なりますので、上の説明があなたにとっては正解ではないかもしれません。変化がもたらす影響は、あなたの年齢、過去の経験、および現在の状況によって異なります。チェックをつけた全ての項目を見てみましょう。休暇や結婚などのポジティブな変化でさえも、対応するためには様々な調整の必要があるのです。

また、他の研究結果も、あなたが生活における変化をどのように経験するか、あるいは備えるかは、あなたにとってその出来事がどれほど難しいかによるものであることを示しています。変化をマネジメントするスキルを実践する人たちは、変化によるストレスを軽減させることもわかってきました。

1-1 変化は絶え間なく続く

私たちが経験している変化

私たちは多岐にわたって様々な変化を経験します。変化は予想するのが難しく、突然やってきて、いつも同じというわけでもありません。一方で、変化は歓迎されたり、計画的に起こしていくものでもあります。国内の経済、社会的な動きや力と同様に、世界規模の勢力が、私たちの個人的な世界および職場環境の変化を加速させることにつながります。変化することは今日を生きる術なのです。

さらに、今日の変化は急激に起こります。もはや変化が短期間で終息を迎え、そのあとに長い安定の状態が続くことなどありえません。今日の私たちの生活は、絶え間なく続く終わりのない変化の連続です。私たちは絶え間なく変わることを求められる世界で生き、成功する術を学ばなければなりません。

考えてみてください。


  • 日本の就業者数は、女性(15-64歳)・高齢者(65歳以上)が増加している一方、男性(15-64歳)は1997 年をピークに減少。
  • 日本で働く外国人数は着実に増加傾向。2017年にはおよそ128万人 
  • 今後の労働市場の主役となるミレニアル世代の4割が、いろいろな会社で経験を積みたいと考えている。また5人に1人が起業経験がある、または今後起業したいと思っている
  • 国土交通省による平成29年度の調査では、テレワーカー制度に基づく雇用型テレワーカーの割合は前年度調査比1.3ポイント増の9.0%と公表されている。今後、更にテレワーカーで働く人は増えることが予測される。
  • 働き方改革の推進により、長時間労働が是正されつつある一方、慢性的な人手不足に悩む業界の問題が深刻化している。

好むと好まざるとに関わらず、あなたは社会で起こっているあらゆる変化に影響を受けます。これらの広範囲に渡る変化は、あなたの価値観だけでなく組織の構造にも影響します。あなたに影響を及ぼすこれらの変化に、どのように対応するかを学ぶ必要があるのです。

変化の波に飲み込まれないでいるためには、学校で学んだことや仕事を通して学んだことで十分というわけではありません。新しいスキルが必要です。それをチェンジマスターのスキルと呼ぶことにします。

あなたは、チェンジマスターのスキル- 新しい要求に迅速かつ柔軟に対応する能力– を持っていますか?人生(生活)がより複雑になるにつれて、新しいアイデア、行動、思考パターンに適応し、それらを自分のものとすることがますます重要になります。

変化を考える際に考慮すべき4つの主なカテゴリーがあります。

それぞれのカテゴリーの動向はあなたの生活にどのような影響を及ぼすでしょうか。

・社会
・経済
・職場
・文化

 

これらの各カテゴリーの動向を、時間をとってざっと見渡してみましょう。