2-6 行き詰まりを避ける方法

トランジションカーブの4つのフェーズを経るには、変化の複雑さとあなたの変化対応の経験に応じて、数週間から数ヶ月かかることがあります。あなたが変化にもっと早く対応すべきなのにそうできないと感じることがあったとしても、焦らないでください。それと同時に、トランジションカーブの途中で行き詰まり、フェーズ4のやる気に進むことができなくなるような状況を避けなければなりません。

私たちは以下の3つのように、トランジションカーブの途中で行き詰まってしまうことがあります:

ターザンスイング: 
各フェーズをきちんと経ることなく、安易に変化をやり過ごす

抵抗に留まる:
抵抗のエーズから抜け出せない

各フェーズの間を行ったり来たりしてジグザグに進む  

“あなたが拒絶を乗り越えて機会を見出すにあたりどれだけ粘り強く取り組む必要があるかは、あなたの拒絶の大きさに比例する”

人はしばしば、変化に対する自身の抵抗の段階を最小限に抑えたいと思うものです。そのために、抵抗や探求の段階を経ずに拒絶からやる気に飛んでしまうことがあります。このような人は、変化が自分に何の影響も与えなかったかのように話したり振る舞いがちです。トランジションカーブを彼らの思う理想の形で渡っていきたいのです。

これを“ターザンスイング”といいます。ターザンスイングとは、喪失、怒り、欲求不満、混乱や、抵抗のフェーズと探求のフェーズの不確実性を経験することなく、トランジションカーブを拒絶からやる気へ(カーブを深く潜らずに)単に横切っていくと考えてください。

それらの感情を無視して飛び移ることで、ターザンは一時的にやる気のフェーズに達しますが、残念ながらそこに居続けることはできません。後にカーブを滑り落ち、経験しなかった抵抗と探求を体験することになるのです。真のやる気に至るには、回避ではなく、変化におけるトラジションのフェーズすべてを経験することによって到達できるのです。その一部を回避しては到達することはできません。

誰もが怒り、無力感、物事がはっきりしないことからくる居心地の悪さを感じたいとは思いません。しかし、ターザンスイングを試みて、トランジションカーブを行ったり来たりするよりは、段階的にトランジションカーブを動いていくことができれば、実際には移行プロセスに費やす時間を短くすることができるのです。

抵抗に留まる

抵抗を示すことで注目を集め、探求とやる気に進むのを避けようとする人たちがいます。 多くの場合、このような人たちの不満に耳を傾け、彼らをなんとかなだめすかして前に進ませようとします。こうしたことは最初のうちは歓迎され、受け入れられるかもしれませんが、他の人たちが探求の段階に入ると足枷になります。もし他の人があなたが取るそうした態度に疲れていることが見て取れたら、変化に対する本質的でない、単なる不満を言い過ぎていないかかどうかを検証する時かもしれません。

ジグザグ

特に次の段階に移ろうとする時、2つのフェーズを同時に経験することはよくあります。このようなジグザグは、1日の中でも起こり得ます。例えば、あるミーティングと次のミーティングとの間など。トランジションカーブをこのように移行することはよくあることで、次の段階に確実に移行することによってジグザグは終わります。

変化の過程で最も難しいのは、抵抗から探求へ移ることができない時です。それはその先に何があるのかを知る前に、周りを把握しようとするようなものです。探求への移行は、大抵の場合、そうした抵抗の気持ちがなくなった時に起こるのです。

2-5 抵抗を認める

変化の中では誰でも当たり前に抵抗のフェーズを経験します。誰もが邪魔をされたくはありません。これまで慣れ親しんできたやり方を手放すことは、ある種の終わりを意味し、今までうまくいっていたパターンは崩れてしまいます。抵抗のフェーズについて考えるうえでのヒントは、

人は変化に抵抗するのではなく、失うことに抵抗するのだ

と考えることです。

以下は人が抵抗する際のいくつかの理由です:

  • 期待が打ち砕かれたり、安心感が脅かされる
  • 自分の人生がコントロールできないかのように、無力感と不安を感じる
  • 自分が愚かに見えはしないかときまりが悪く、恥ずかしさや恐れを感じる
  • 変化による影響を理解するだけの十分な情報がない

抵抗は避けるべきものではありません。それは変化のフェーズを経験しているしるしとして認識することができます。自分の気持ちに耳を傾け、その声を行動していくドライバーとすることができるのです。

抵抗を克服する最も効果的な方法は、自分の気持ちを認め、他の人にそれを話すことです。似たような変化に直面している、あるいは直面していた人と気持ちを分かち合うことは特に助けとなるでしょう。話しをした後、自分が楽観的になり、希望が持てることに気づくことがよくあります。これはあなたが探求のフェーズに入っていこうとする兆候です。

抵抗を理解する

あなたが直面している変化について考えてみましょう。あなたがこの変化に対して抵抗を感じるもっともな理由をいくつか挙げてください。

失いつつあるものは何か?

どんなパターンが崩れているのか?

期待はどのように変わってきたか?

変化を捉える上で影響を与える個人的な状況や事情とは?

2-4 変化の4つのフェーズ

心理曲線を乗り越える速度や切迫感は人によって違いがありますが、普通すべての個人、チーム、そして組織は4つのフェーズのすべてを通ります。それぞれのフェーズについて、詳細に見ていきましょう。

フェーズ 1: 拒絶(Denial)

著しいあるいは予期せぬ変化に対する最初の反応は、たいていの場合ショック- 情報を認識することに対する一般的な拒絶 – となって現れます。このように、私たちは変化に圧倒されないように自分自身を守るのです。通常の反応は以下の通りです:                                                         

拒絶 ”そんなことが起きるわけがない”     
無視 ”騒ぎが収まるまで様子を見よう”   
軽視 ”ほんの小さな調整に過ぎない”     

拒絶のフェーズでは、引き続き生産的なペースで仕事をすることが可能です。しかし、遅かれ早かれ、変化による影響が現れ始め、人々は喪失や抵抗による混乱を経験することになります。                                                           

フェーズ2: 抵抗(Resistance)

このフェーズでは、事態は悪くなっていくように見えます。個人的な苦痛のレベルは上がります。新しい組織について非難や不満を言う対象となる個人や出来事を探しては時間を無駄にすることがよくあります。身体的、感情的、精神的にも様々な症状を感じるかもしれません。自分は変化の中で生き残ることができるのだろうかと、自分の能力を疑うこともあります。このフェーズでは、未来に向けて準備をすることよりも、失いつつある過去を嘆き悲しみます。多くの場合、耐えきれずに拒絶のフェーズに戻って、あたかも何も起こっていないかのように振る舞うことがあります。この段階では自分の感情と向き合うことが、次のフェーズにより速く移る手立てとなります。   

フェーズ3:探求(Exploration)

もがき苦しんだ後、個人も組織も負の状態から脱し、一息ついて、やっとポジティブな希望ある未来に意識が向きます。すると、「きっと大丈夫」という感覚が湧いてきます。 この感覚は気分が良いといったほんの些細な気持ちの変化からわかることもあれば、変化が始まって以来初めて夜ぐっすり寝ることができたといった、非常に明らかなことからわかるものもあります。タイミングは人によって様々で、その状態になった時にはわかります。 
 

新しい方向性はすべてが一度に見えてくるわけではありません。まず最初に新しいことをやってみようとする意欲が湧いてきます。あなたは新しいやり方を発見したり、探求し始めます。目標を明確にし、必要なリソースを検討し、代替案を探し、新たな可能性を試します。正しいやり方よりも、とにかく動き始めることに気持ちが向きます。ここでは自分の持つ能力以下のことに甘んじたり、探求のフェーズをあまりにも早く終えることは避けるべきです。このフェーズは高いエネルギーを必要とし、あなたの創造性もピークとなるでしょう。

フェーズ4: やる気(Commitment)

ついに、人々は困難を乗り越え、新たなやり方を見出し、そして新しい状況に適応します。自分たちの仕事に新たな機会と、新たなエネルギーを見出します。組織は新たなビジョンとより高いパフォーマンスにフォーカスします。やる気(Commitment)のフェーズは、新たな行動指針にフォーカスすることによって始まります。それは新たなやり方で仕事をすることや、新たな仕事を探すことかもしれません。あなたが新たなアクションを起こすことを自分自身にコミットできた時、そこには成長と適応があるのです。  

絶えず続く変化

トランジションのサイクルは終わることはありません。生きている限り、あなたは変化を継続的に経験し、新たなチャレンジと危機に直面するでしょう。一つの変化を終えるより前に、新たな変化に直面することがあるかもしれません。いくつかの変化が同時進行することも珍しくはありません。変化に圧倒されてしまわないよう、どの時点においても乗り越えようとしている個人的、および組織的な変化がどのくらいあるのかを認識しておくことは大切です。

あなたはトランジションカーブのどこにいますか?
あなたは今トランジションカーブのどこにいるのか、考えてみましょう。現在直面している、もしくは最近経験した大きな変化について考えてください。

次に、この変化に対してあなたはどのように反応しているかを考えてみます。

あなたが最近、近々やって来る変化について聞いたことがあるとしたら、拒絶(Denial)か抵抗(Resistance)にいるかもしれません。あなたは自分はすでにやる気(Commitment)にいると考える(あるいは思いたい)かもしれませんが、やる気のフェーズに行くまでには時間がかかるものです。もしあなたが組織変革の只中にいて、自分のチームや経営陣よりも先のフェーズに進んでいる場合、それはあなたをさらに苦しめるかもしれません。たとえあなたがチームメンバーと足並みを揃えたいと思っても、彼らは、自分が経験している変化の数やそれぞれが持つパーソナルフィルターによって、異なるスピードで動いているかもしれないのです。

それぞれのフェーズの兆候を理解する

トランジションカーブの各フェーズには、兆候があります。下記にある各フェーズの兆候に注意してみましょう。

2-3 変化をナビゲートする

何年もの間、多くの西洋人は“危機”という漢字には危険と機会の両方の意味があると考えてきました。

この“危機”という漢字は、ジョン.F.ケネデイやニクソン、ライス元国務長官そしてアル・ゴアといった著名人が使ってきました。これが“危機”という漢字の正確な訳ではないにしろ、変化にも危険と機会という二つの意味が含まれるという考えは深遠で興味をそそる概念であり、この物語が半世紀以上にわたって人気があるのもうなずけます。

この二面性は変化にもともと備わっている性質です。私たちは変化に対して両方の側面から反応します。変化の道のりはスムーズであることなどほとんどなく、予測も難しいものです。私たちが変化に対して最初にやるべきことは、変化の必要性を認識し、これまでの古いやり方を捨てることです(拒絶から目覚める)。その過程では感情的になり、もがくこともしょっちゅうあります(抵抗)。変わることの必要性をしっかり認識した後は、古いやり方をあきらめて、新しい機会に集中し始めることに私たちのエネルギーは向かいます(探求)。そうすることで変化を乗り越えるための戦略を練ることができ、行動を起こすことにコミットします(やる気)。

変化とその過程をナビゲートするとは、以下に示す4つのフェーズからなる心理曲線を進んでいくということです。

2-2 自分のパーソナルフィルターを理解する

あなたが現在人生のどの段階にいるかによって、変化に対する反応は異なってくるでしょう。若い人たちの方が簡単に変わることができるというのは本当でしょうか?人生の初期段階では大問題と思えたことが、後になってから大したことではないと思えることもあります。さらに、若い人が初めての仕事をするための能力をやっとの思いで身につけた場合、彼らにとってその仕事を“手放す”ことは難しいかもしれません。

たくさんの変化を経験した人は、広い視野で物事を受け止めることができ、後の人生でより大きな変化に対応できるようになります。

確かに、誰もが自分自身の独自の物の見方、すなわちパーソナルフィルターを持っているために、変化に対してそれぞれユニークな方法で対応しています。これらのフィルターは私たちのこれまでの人生や経験からくるものです。人はパーソナルフィルターによって、同じ変化を隣の人とは違うように経験するという説明がつくわけです。

経験がもたらす効果

あなたが自分の過去の経験を理解すればするほど、同じ変化を自分とは異なる形で経験するかもしれない他の人に対する思いやりの気持ちが高まります。

以下のそれぞれの領域において、あなたの特徴とは何ですか?
これまでの自分史  (大きな喪失,大きな変化) :

 

所属する集団の歴史(家族や集団の一員として直面したこと):     

性別 (男性、女性による違い):   

民族(人種や民族による違い): 

ライフステージ(ライフサイクルのどこにいるのか)

2-1 変化に対して心を開く

変化を乗り越えていくことは、決して楽ではありませんし、痛みが伴います。たとえそれが、心踊るワクワクするような変化であったとしても、私たちに何かを“手放すこと”や難しい選択を要求します。この章では、変化を経験していく過程であなたが必ず通る心の動きのフェーズについてご紹介します。これにより変化においてどんなことが自分自身に起きるのか、予測できるようになります。

ライフサイクルを通しての変化

あなたの人生にはいくつもの予測することができる変化があります。この世に生まれた後、幼少期や青年期・思春期を経て、大人になっていきます。そして、就職し、恋人ができ、家族ができ、仕事を通じて成長し、子供を育て、両親を看取り、キャリアの転換があり、引退の日を迎えます。

ところが、私たちの親世代の頃に比べて、今日、私たちの生活はより複雑で、予測不可能になっています。私たちの多くは私生活においても仕事においても、たくさんの迷いや混乱を経験しています。たとえば、グローバル社会において今世紀の労働者は、生涯4つか5つの異なるキャリアを持つだろうと言われています。欧米では定年退職するまで同じ会社に勤めている人はほとんどいません。日本でも経団連の中西会長が2019年5月7日の定例会見で終身雇用を前提にすることは限界になっていると述べた通り、人材の流動化が今後ますます顕著になってくるでしょう。採用と大学教育の未来に関する産学協議会では「Socitety 5.0人材育成分科会」の中で、今後求められる人材像と教育のあり方が議論されています。私たちは学校教育の中だけではなく、継続的に生涯にわたって学習することが求められているのです。

仕事を変えるということは、あなたに学ぶことや新たな方向性に対しオープンであることを求めます。そしてどのように新しいことを始め、古いことに別れを告げるかを知ることでもあります。これらの始まりや終わりを、できるだけ混乱やストレスなくナビゲートできるようになることが、この章のねらいです。

人生は予測可能な変化であふれています – 仕事の変化、人間関係の変化、住環境の変化、死、誕生、など。

予測する
あなたが現在人生のどこにいるかをベースに、近い将来あなたが経験するであろう変化について考えてみましょう。それはどのような変化ですか?

変化に対しどのように反応してきましたか?

これまでにあなたが経験した主な出来事– 良かったことも、悪かったことも – を思い返してみましょう。その中から1つの出来事を選び、以下の質問に答えてください。

・これから先、大きな変化がくることを、どのようにして気づきましたか?

・その変化に対して、どのように備えましたか?

・あなたが直面した最も強い恐れや困難は何でしたか?

・これらの恐れや困難をどのようにして乗り越えましたか?

・変化を乗り越える際に、どんな思いを抱いたり、どんな行動をしましたか?

・変化をマネージするために、あなたが学ぶ必要があったのはどんなことでしたか?

1-8 変化に強くなる

同じ変化に直面しているのに、なぜある人は他の人とは違う反応をするのか。人はその理由をずっと知りたいと思ってきました。

様々な研究者たちは、強いストレスがかかったり、変化を経験している中であっても、健康であり続ける人たちを特徴づける鍵となる能力があることを見つけました。スザンヌ コバサ博士とサルバドル マディ博士は、ストレスの高い状況の中で極めて健康であったマネージャーたちと、似たような状況の中で軽度から重度の病気になったマネージャーたちとを比較しました。レオナルド サイム博士は、社会的支援と長寿に関する広範な調査を行い、人は誰かと直接会うか電話で話すかのいずれでも、より多くの社会的接触を持つ人ほど寿命が長くなることを見出しました。これらの研究から、「*変化耐性:ハーディネス」のパターンが浮かび上がってきました。

*変化耐性:ハーディネスとは変化や困難な状況に耐えられるたくましさ、強さのこと

変化に直面しても強い人々は、以下のような特徴があります:

Commitment(コミットメント)
自分の仕事にきちんと向き合い、コミットしていました。彼らは変化の中で大局的に物事を捉えていました。

Challenge(チャレンジ)
変化をやりがいがあるチャレンジ、そして好機だと捉えていました。彼らは現実的な選択肢と可能性にフォーカスしていました。

Control(コントロール)
自分たちがどうすることもできないことの代わりに、自分たちがコントロールできることに注意を向けていました。

Connection(コネクション)
同僚や他者に助けやサポートを求めていました。彼らは広く学ぶことができるよう、人と繋がっていました。

これらの4つのC – commitment(コミットメント), challenge(チャレンジ), control(コントロール), connection(コネクション) – は効果的なチェンジマスターになるための鍵となる能力です。

変化耐性の特徴である4つのCそれぞれについて、自分の経験から例を挙げてみましょう。仕事に限定する必要はありません。あなたがこれまでに示したことのある変化耐性の数(の多さ)に、驚くかもしれません。  

あなたはどのくらい変化に強いですか?

以下に示す変化耐性の要素のうち、あなたに当てはまるものはどれでしょうか?

Commitment(コミットメント)
・自分のやっている仕事や会社が好きだ
・その日の仕事が待ち遠しくて目がさめる
・自分がやっていることには意味や目的があると感じられる
Challenge(チャレンジ)
・新しいプロジェクトにワクワクし、エネルギーが湧いてくる
・新たな機会を探すことは、私の人生にとって重要だ
・自分の現在の実力を超えるようなプロジェクトに取り組む
Control(コントロール)
・自分ができることに集中し、自分にはできないことについて、フラストレーションを感じて時間やエネルギーを浪費するようなことはしない
・仕事上の要求が高い時には、自分の最善を尽くすことが最も効果的なアプローチであると知っている
・物事を成し遂げる新たなやり方をいつも探している
Connection(コネクション)
・自分が問題や困難を抱えている時には誰か助けてくれる人を探す
・他の人に助けてもらったのと同じように、自分も他の人を助けていると感じる
・自分の周りの人たちからできる限りたくさんのことを学ぼうとしている

上記に印が多くつけばつくほど、あなたは変化に直面した際に耐性が高いと言えるでしょう。

チェンジマスターになるための4つの能力– commitment(コミットメント), challenge(チャレンジ), control(コントロール), そしてconnection(コネクション)は、今からでも身に着けることができます。

1-7 変化に対する反応をコントロールする

私たちは変化による影響を受けずにはいられませんが、変化にどのように反応するか、対応するかを学ぶことはできます。私たちは人生の中で、新しいスキルやアプローチ方法をいつでも学ぶことができるのです。

しかし人は一旦ある方法が習慣となって身につくと、新しい状況においても同じアプローチ方法をとってしまうことがよくあります。

変化の最中、あなたは成果に影響を及ぼせるほどの力を持っていないと感じるかもしれません。もしこのように感じるときは、あなたが直接影響を与えることができる範疇を見つけることが賢明です。変化をマネージするのに役立つスキルや姿勢を学び実践することで、それが可能となります。

最も劇的な変化の中であっても、あなたは大抵、以下のことをコントロールすることができるようになります:


  • 変化に対するあなたの内面的または感情的な反応、変化に対するあなたの姿勢、他者との関わり方をコントロールすることができます。
  • 変化のプロセスに影響を与えることができます。あなたは提案をしたり、他の人と話したり、インプットすることができます。
  • これから起きることについて情報を収集し、助けとサポートを求めることができます。      
  • 自分の体のセルフケアを習慣化し、実践することができます

あなたは、上記の事柄を意識することで、変化に対する自身の反応をコントロールできるようになります。つまり自分が変化にどのように反応するかは、あなた自身が決められるのです。あなたは、自分の思いや感じ方、自分自身をどのように扱い行動するか、同僚や上司とどう関わるかを自分で決められるのです。

変化への効果的な対応には、いくつかのスキルと新しい姿勢で臨むことが必要になります。同じ状況に直面している2人がいるとしましょう。

新たなスキルやアプローチ方法を知らないAさんは、変化に対し挫折を味わい、何もできない被害者になってしまう可能性があります。

Bさんも変化を歓迎しなかったとしても、自分が直接影響を与えることのできる範疇に対して積極的にアプローチをすることで、新たな状況がもたらす機会を活かす準備ができるのです。

変化に対し異なるやり方でアプローチする新しいスキルを学ぶのに、遅すぎるということはありません。  

1-6 安心できる環境を自ら作り出す

変化のスピードを加速させる際には、古いやり方や体制が崩れ、組織内に多くの空白が生まれ混乱することがしばしばあります。例えば、岩石を砕いて、たくさんの小石にした状態を思い浮かべてみてください。小石になったことで岩の表面積(開放性)は増えましたが、岩という大きな塊はなくなりました。

かつては、安心・安全は組織の中心につながっていることから得られ、リスクをとったり波風を立てることからは得られませんでした。ところが今では安心・安全は、学習とイノベーションが行われる最先端にいることから得られるのです。

チェンジマスターは、垣根を超えてコミュニケーションし、あらゆる方法で影響を与え、情報源にアクセスし、混沌とした状況を乗り越えていきます。安心・安全はもはや組織の中心にはないのです。あなたは変化に精通していくことで自分自身の安心・安全を作ります。

最先端で情報の探求者となることで、あなた自身が直面する変化を効果的にマネージしていく道のりを歩んでいる(マネージする途中過程にある)と言えます。そうすることで、あなたはもっと “変化に強くなる”でしょう。


変化する世界で自分自身の安心・安全を築くためのヒント:

  • 好奇心を持つ

他の部署やチームが何をしているかについて学ぶ。組織や業界が目指す大きな目標を理解する。会社のあらゆる部署から聞き学ぶ。様々な意見の中で真に理解すべきことを探す。これらのグループを一つにする役割を担う。

  • 自分の職務にとらわれない 

手をつける必要がある仕事を探す。あなたがもっと貢献できることがあれば、あなたの仕事内容に縛られない。問題のあるところ、やることがたくさんあるのにリソースが足りないところに出向く。これらはあなたが価値を提供できる場所です。

  • 複数の能力を開発する

「すべての卵を一つのかごに入れるな」という英語の諺があります。危険が起きた時に被害が分散されるよう、逃げ道を用意しておくように、という意味です。もしあなたが限られたスキルしか持っていないとすれば、それはリスクになりえます。複数のスキルを持っていれば、物事が変わってもバランスをとることができます。 

たとえ環境が変わっても、様々な業務に携わることができ、やるべきことを見失うことがありません。学習と自分への挑戦を続けてください – 安心領域に落ち着かないでください 。

  • フレキシブル(柔軟)でいる

今の世界情勢に合わない夢や期待は手放す。人は時に間違った解決策にがんじがらめになってしまうことがあります。– もはや過去の成功体験は役に立たないにも関わらず、これまでと同じことをこれまで以上に一生懸命、執拗に、長く、より強くやってしまうのです。

立ち止まらないで – 前に進みましょう。人は何か新しいことをしようとリスクを取るよりも、立ち止まってしまうことがあまりにも多いのです。

あなたは自分自身の安心・安全を作り出していますか? 

以下のそれぞれの領域において、変化により強くなるためにあなたが現在やっていることを、少なくとも1つは書き出してみましょう。

好奇心を持つ:

自分の職務にとどまらない:

複数の能力を開発する:

フレキシブル(柔軟)でいる: 

1-5 新たなやり方を積極的に学ぶ

変化をマスターすること、またはチェンジマスターになることについて、学校で正式に学んだことがある人はいないでしょう。

変化し続ける方法を学ぶには、精神的な強さと新しいことを試す意欲が必要です。変化の方法を学ぶことに、「卒業」はありません。

私たちは、適応、進化、そして成長する力を伸ばし、磨きをかけていく必要があるのです。

チェンジマスターであるためには、変わる方法を知っている必要はありませんが、物事を新たなやり方で試したり、新たなやり方を探求することに積極的である必要があります。そうするためにはいくつかの方法があります。

たとえば:

新たな技術やヒューマンスキルを研究し、獲得する。学び続ける – 学ぶ必要性が生じるまで、待つことがないようにする。積極的に学び、実践してみる。

人(人材)を活かす:積極的に学ぶ人とつながり、どのように新しいやり方を学んだかを尋ねる。

コンフォートゾーンから抜け出て、古いやり方から自分を解き放つ。より良い方法があるはずと自分自身に言い聞かせる。

すべての情報が揃わなくとも行動することを学ぶ。変化を経験しているときは、決してすべてに確信を持つことなどできません。慎重な人々は、すべての情報が得られるまで待つことを望むでしょう。しかし、今すぐ行動しなければなりません。あなたが持っているベストの情報で行動できるようにしてください。あなたの直観に従ってください。あなたが普段は探求することのないテーマや内容のカンファレンスに行くか、本を読むのも良いでしょう。