組織学習における失敗経験の共有

コロンビア大学ビジネススクールシーナ・アイエンガー教授のInformed Intuition 「経験による直感」という言葉はとても私の興味をそそりました。それを養うことで人生の選択の質を上げられるという研究成果を提示しているので、なおさらです。ここでいうInformed Intuition 「経験による直感」 とは直観というニュアンスに近いものです。単なる感情の趣でもなければ、理性的な判断でもなく、自らの選択の結果を検証し、そこからの学びを知識化し、同じ失敗を繰り返さない判断ができる感覚と言えるかもしれません。失敗学の権威である畑村洋太郎先生は失敗の結果を検証し、それを何度も繰り返することで「思考のけもの道」が作られると、分かりやすい例えで語っています。

「経験による直感」を養うにも「思考のけもの道」を作るにあたっても、二人が共通して提唱しているのが、自分が下した判断と結果、そこからの学びを知識化し(具体的な内容はここでは省きますが)書き留めるということです。考えるだけではなく、失敗ノートに書き留める(PC、スマホに打ち込み、クラウドストーレッジに保存する)ことで、見直しが可能になります。

畑村先生は、さらに書き留める際の重要な要点として、その人が何をどう考え、感じ、どんなプロセスでミスを犯したのかを、当事者の立場から見た主観的な言葉で克明に記録することを強調しています。「え、客観的ではないの?」と思いたくなりますが、失敗経験の知識化が自らの真の振り返りの結果として、他の人のラーニングとして活きるのは、自分の立場に置き換えてそれを実感できたときであり、客観的な事実の羅列は心に響かないと言われれば、なるほどと頷けます。

組織学習の一環として、マネジャー向け、社員向けに、それぞれの失敗経験から学ぶプログラム作成を手がけた経験があります。失敗を語ってくれるベテランたちと相対する中で、誰しもが経験する失敗とは言え、自らの失敗経験を共有してくれるリーダーの存在はとても尊いと感じます。失敗経験からの知識化を本人の中に留めることなく、自己開示をすることで、その立場に就く他の人の成長や組織の発展につなげていくことができるのです。

リーダーシップ 3つの原則

ラグビーの理論と実践は実ビジネスの持続的成長、組織作り、人の成長に大いに役立つ。

EDDIE JONES’ ENSEMBLE RUGBY powered by adidas
“エディ ジョーンズが教えるコーチ向けスペシャルセミナー”に参加し、彼がコーチとして拠り所としているリーダーシップの原則を体感した。

彼が座学で語るラグビー理論は明快であり、フィールドで選手たちを実指導しながらフィードバックを出す様はまさに2015 Rugby World Cup で見たJapan Wayを体現するものであった。

炎天下の中でも指導をする全く衰えを知らない強靭な体力、適切なフィードバックを出すための原理原則と人を見抜く眼識、選手を鼓舞し士気を高めていくにあたり一貫した態度と言動、折れない精神、どれ一つをとっても超一流のリーダーが体得している特質を垣間見た。

彼が新しいチームのコーチとして就任した後、選手たちに自分の指導方法を理解させ、浸透させるために指導者として心がけていることを尋ねてみた。

彼は最初にタレントの見極めをあげた。(本人のポテンシャルを含め)どんなタレントがいるかによってチームが強くなっていくスピードには違いがあるからだと言う。それはエクセレントカンパニー飛躍の法則でJim Collinsが言うように「最初に誰をバスに乗せるかが最も重要である」と同じ原則である。
彼はまた自分の指導方法を浸透させるためにさらに2つの原則として以下を提示した。
1) Clarity: 勝つためのゲームプランの明瞭さ
2) Cohesion: 一致団結して協働するチーム

ゲームに臨むにあたり、システムを理解させた上で、現実に起きるカオスに柔軟に対応させるため常に選手に考えさせる訓練を徹底していた。これは適切なフィードバックによるコーチング手法そのものであった。またEddieが言う“Cohesion”はまさにOneAssociatesがDr. Cynthia Scottと連携して取り組んでいるネットワーク型リーダーシップを具現化する新しい協働の行動様式作りであり、組織変革プロジェクトにおける肝と一致していた。

やってみなけりゃ分からない

2016年にスタートした一年間の実践型リーダーシッププログラムが終了した。

自分の強い意志を持つが聞く耳を持たない者、論理的に話しを展開するが、人の心をつかめない者、なかなか議論に入り込めない者、自分の経験を人に教えようとする者など、当初の話し合いは全く噛み合わなかった。

このメンバーがオフサイトのキャンプ、現場でのプロジェクトの実践、自己洞察、グループコーチングを経て、成長の軌跡と現場での改善活動に関する最終成果を発表した。

その場には昨年このプログラムを終了したリーダーたちが出席し、率直かつ思いやりのあるフィードバックをだした。

今年のメンバーのみで最後のブリーフィングをしたが、お互いから多くを学んだというコメントが多く、心理的な距離がぐんと近くなっている。

一年前の空をつかむような議論が懐かしい。人が協働関係を作るためには、自分を超えたより大きな目標の意味を感じ、それを共有し、腹を割って話し合っていくこと、ともにチャレンジしていく行動と経験が有効だ。