組織学習における失敗経験の共有

コロンビア大学ビジネススクールシーナ・アイエンガー教授のInformed Intuition 「経験による直感」という言葉はとても私の興味をそそりました。それを養うことで人生の選択の質を上げられるという研究成果を提示しているので、なおさらです。ここでいうInformed Intuition 「経験による直感」 とは直観というニュアンスに近いものです。単なる感情の趣でもなければ、理性的な判断でもなく、自らの選択の結果を検証し、そこからの学びを知識化し、同じ失敗を繰り返さない判断ができる感覚と言えるかもしれません。失敗学の権威である畑村洋太郎先生は失敗の結果を検証し、それを何度も繰り返することで「思考のけもの道」が作られると、分かりやすい例えで語っています。

「経験による直感」を養うにも「思考のけもの道」を作るにあたっても、二人が共通して提唱しているのが、自分が下した判断と結果、そこからの学びを知識化し(具体的な内容はここでは省きますが)書き留めるということです。考えるだけではなく、失敗ノートに書き留める(PC、スマホに打ち込み、クラウドストーレッジに保存する)ことで、見直しが可能になります。

畑村先生は、さらに書き留める際の重要な要点として、その人が何をどう考え、感じ、どんなプロセスでミスを犯したのかを、当事者の立場から見た主観的な言葉で克明に記録することを強調しています。「え、客観的ではないの?」と思いたくなりますが、失敗経験の知識化が自らの真の振り返りの結果として、他の人のラーニングとして活きるのは、自分の立場に置き換えてそれを実感できたときであり、客観的な事実の羅列は心に響かないと言われれば、なるほどと頷けます。

組織学習の一環として、マネジャー向け、社員向けに、それぞれの失敗経験から学ぶプログラム作成を手がけた経験があります。失敗を語ってくれるベテランたちと相対する中で、誰しもが経験する失敗とは言え、自らの失敗経験を共有してくれるリーダーの存在はとても尊いと感じます。失敗経験からの知識化を本人の中に留めることなく、自己開示をすることで、その立場に就く他の人の成長や組織の発展につなげていくことができるのです。

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James Hayase

James Hayase

There is no limit to one's search for excellence.